平成30年版情報通信白書によると、「少子高齢化やそれに伴う人口減少は、我が国経済・社会に大きな影響を与える可能性があり、この課題に対して、近年更なる発展を遂げているICTにより人・モノ・組織・地域などを「つなげる」ことで、デジタルトランスフォーメーションが進展し、課題を解決するための新たな価値創造を図り、持続的成長を目指すことが考えられる」とあります。
我が国の森林に目を向けますと、間伐等の管理が十分に実施されていない人工林の増加が土砂災害等につながるとして課題となっています。都市住民が増えたことや、森林を所有している人が都市に移り住むことにより、森林との関係性が希薄になったことも原因の一つかと思われます。 グーグルマップ等での航空写真や人工衛星画像の公開により、森林を上空から見ることが容易にできるようになりましたが、当然ながら見ている森林が十分に管理されているのかどうか、十分に成長しているかどうかはわかりません。 そこで、森林と人々をIoTでつなげることができれば、森林への関心が高まり、国民全体での森林を管理していく機運が高まるのではないかと考え、森林IoT「見ま森さま(MMS)」の研究開発、行田市内屋敷林での試験運用を続けています。来年も引き続き、よろしくお願い申し上げます。(下記グラフは、行田市内M宅設置MMSデータ取得状況です)
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7月23日から試験運用を開始した埼玉県行田市内のM宅屋敷林(単木)に設置した「見ま森さま(MMS)」ですが、ほぼ5か月にわたり、試験運用を続けることができました。
途中、子機の電池交換を1回しましたが、親機の太陽光発電による自立型電源による稼働は、途中、一度も故障することなく、5か月間継続しています。 夏場の高温や、台風接近による強風等にも負けず、毎日、Sigfox⇒インターネット⇒クラウド経由にて、データを送り続けています。 来年も引き続き、試験運用を続ける予定です。よろしくお願いします。 NPO法人 森づくりフォーラム発行の『森づくりフォーラム通信』No.196、2018年12月27日号で、「ブラジル「サッカー場100万面」の森林、1年で消失」のニュースが掲載されていました。http://news.livedoor.com/article/detail/15658885/
記事には「ブラジル政府の特別調査機関によると、森林破壊は2017年8月~2018年7月に前年同期比で14%近く拡大し、7900平方キロの面積の森林が消失したという。」とあります。 また、2016年に公表された「世界森林資源評価(FRA)2015」(第2版)では、 2010-2015年において森林面積の大きな正味の減少が見られた上位10か国で、ブラジルが1位となっており、森林減少が長期間にわたり続いていることがわかります。下記は、1990年と2015年を比較した森林面積の正味の増減(単位:1,000ha/年)を示したものです(FRA2015第2版より引用)。 一方、中国やインド等では、植林により増加しているようです。 林野庁から公表された平成29年木質バイオマスエネルギー利用動向調査結果ですが、同様の形式で平成27年、平成28年も調査が実施されています。
そこで、木材チップの由来別利用量の「間伐材・林地残材等」の全国総計を見ますと、約117万トン(絶乾)、約192万トン(絶乾)、そして、約263万トン(絶乾)と大幅に増加していることがわかります。 各都道府県で見てみますと、下記に示しますように、北海道、岩手、大分、宮崎、鹿児島が利用量も多く、増加量も多い傾向が見られます。 FITでの間伐材等由来の木質バイオマスによる発電における全国の新規認定容量の約138万キロワット(平成30年6月末時点)に対して、新規導入容量が約105万キロワットであることから、まだ間伐材・林地残材等の木材チップの利用量は増える可能性があります。 埼玉県行田市内の2宅の屋敷林内に設置してあります森林IoT(見ま森さま:MMS)ですが、今月15,16日以来の冷え込みで、M宅MMS及びA宅林縁部MMSについては、氷点下まで気温が下がったと見込まれます。
ちなみに、最も近い熊谷のアメダスは、7時に-2.2℃、MMS設置の土地利用に似ている久喜では、同時刻に-3.1℃を観測しています。 全国でも、気温が0度未満まで下がった所(冬日)は570ほどで9日ぶりの多さだそうす。(下記、気象庁ホームページより、12/25午前7時アメダス気温マップから引用) 年末には、かなり強い寒波が来るようです。3台のMMSが順調に試験運用できることを期待します。 平成30年12月20日に、林野庁から、「平成29年木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の確報版が公表されました。http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/riyou/181220.html
再生可能エネルギーの固定価格買取制度による木質バイオマス発電からの買取量の増加に伴い、最も買取価格の高い「間伐等由来の木質バイオマス」に該当する「間伐材・林地残材等に由来する木質バイオマス」は、263万絶乾トンとなり、平成28年から37.4%増加しています。 その他の木質バイオマスの木質ペレットもH28比75.2%増、薪が同27.5%増、木粉(おが粉)が同25.8%となっています。 下記に、平成29年にエネルギーとして利用された木質バイオマスの種類別利用割合を示しました。なお、木材チップは絶乾トン割合で、それ以外はトン割合となります。買取価格が最も高い「間伐材・林地残材等に由来する木質バイオマス」は木材チップに該当することもあり、圧倒的に木材チップが多く占めています。 埼玉県行田市内A宅の屋敷林設置MMSの親機内には気圧センサーも格納されています。こちらについても、近傍の熊谷の気象データと比較しました。
気象データは、平均気圧の情報が入手できましたので、それと、MMSの林縁部設置と林内部設置の親機内気圧センサーの最低気圧と最高気圧のデータをグラフにしました。下記にそのグラフを示します。 熊谷で観測された気圧の平均値は、MMSの最低気圧と似たデータとなっています。MMSの最高気圧については、若干、林内部設置MMSが、林縁部設置MMSより低い日も見られますが、ほぼ同じ傾向と思われます。 行田市内で試験運用しているMMSの親機内には、湿度センサーが設置されています。一般的に森林内の湿度は、樹木の葉からの水分蒸発により、林外より高いといわれています。4%から13%高いという調査例もあるようです。下記に、行田市内A宅の林内と林縁部に設置したMMSの最低湿度と、熊谷に設置している気象庁アメダスの最小相対湿度を比較したグラフを示します。
同じ観測方法ではないため、あくまで参考としての比較ですが、熊谷の気象データの振れ幅が広いのに対して、MMS2か所のデータは振れ幅が小さいようです。また、若干ですが、林縁部より林内部設置MMSの最低湿度が高くなっています。葉から水分蒸発の影響があるのかもしれません。 低照度対応MMSは、7/28から行田市内A宅の屋敷林にて、林縁部南向きと林内西向きの2か所に設置してあります。林内と林縁との違いについて、格納庫内の温度センサーから送信されてきたデータを比較しました。参考として、最も近傍の気象庁熊谷での気象データとも比較しました。
下記のグラフに、林縁と林内の設置したMMSの最低温度・最高温度、ならびに熊谷での最低気温と最高気温を示しました。 林縁に設置したMMSでは、最高温度が、林内の最高温度及び熊谷の最高気温より高い日が見られます。南向きに設置してあるため、太陽光により格納庫内温度が上昇したと考えられます。 一方、林内のMMSは、日陰になっている可能性が高く、熊谷の気象データとほぼ同じ数値となっている日が多く見られます。 最新のLPWA通信技術「Sigfox」を利用して、屋外の過酷な環境に設置した森林IoT機器(MMS:見ま森さま)で感知した各種センサーデータ(傾き、温度、気圧等)の継続受信が可能かどうか、また、太陽光発電による自立運転が可能かどうか等を検証するために、行田市内でMMSの試験運用を継続しています。
センサーデータの送信に太陽光発電からの電力を利用していることから、太陽光発電が十分に機能している場合には、送信頻度を高め、そうでない場合には、送信頻度を低く設定してあります。そこで、行田市に最も近い熊谷設置アメダス情報の日照時間との関連についてみてみました。下記に、低照度対応の太陽光発電に変更したA宅の2つのMMSの送信回数と日照時間をグラフにしました。 林縁樹木に設置したMMSでは、日照時間との関連性は高く、両者の相関係数は0.85となりました。但し、曇りでも十分に発電し、送信していることがわかります。林内樹木に設置したMMSでも、日照時間が少ない日でも十分に発電し、送信していますが、林縁樹木設置に対して、やや送信回数が少ない日がみられます。雲量が多いと林内は暗くなる等の影響かもしれません。 |
Author井内正直 Archives
September 2022
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