農地や集落全体を獣害から守るために設置が進んでいる防護柵ですが、設置すれば被害が完全に無くなるわけではありません。政府の会計検査院が平成28年度に調査した結果によりますと(https://report.jbaudit.go.jp/org/h28/2016-h28-0347-0.htm)、26、27両年度に侵入防止柵を設置した296事業主体に係る7,825地区(事業費計92億8166万余円、交付金交付額計85億9294万余円)における27、28両年度の鳥獣被害の状況を確認したところ、侵入防止柵を設置したほ場ごとに設置後の鳥獣被害の状況を把握していたのは、184事業主体に係る3,192地区となり、そのうち、75事業主体に係る496地区で被害が発生しており、被害金額計5億2361万余円と報告されている。つまり、設置後の状況を把握しているほ場の中で約6分の1で被害が発生していることになります。
被害が継続している原因については、道路や河川の管理者の許可が得られず侵入防止柵を設置できない箇所があるなどのやむを得ない事情がある一方で、維持管理に当たり、倒木や鳥獣によると思われる損壊が修繕されずに放置される等、事業主体において設置及び維持管理に改善の余地がある状況となっていたと報告されています。設置後の維持管理の重要性を改めて指摘しています。 再造林地での防護柵IoT技術を、農地や集落防護柵に活用するための研究を進めていきます。
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昨年度総務省再造林地防護柵IoT実証事業では、スギ苗木の植林地の周囲を囲むように設置してある防護柵を対象としました。山奥で傾斜がきつく、足元も残材等で不安定な場所での設置ということもあり、支柱は軽量かつネットは繊維状(一部内部にステンレスが入っているケースもあり)のものを採用している。そのため、強風や倒木等によって、比較的損壊が発生するが、設置場所の特性で頻度高い点検は困難であることから、IoTによって点検を代替できないか実施してきました。
一方、農地や集落を囲む防護柵については、古くはトタン板や漁網等が利用されていたが、近年は、コストも安く、軽量で、設置しやすい「ワイヤーメッシュ」の防護柵が利用されている(下記の上写真)。もともとは、コンクリートの内部に埋め込んで、強度を高める為に開発されたものであるが、現在は、農地をシカやイノシシ等の侵入から守るための防護柵として活用されている。再造林地設置の防護柵に対して、平地で、足元も安定している場所が多いことから、設置後の損壊はそれほど多くないようであるが、ワイヤーメッシュの地面埋め込みが浅いと、そこからイノシシ等が侵入するケースがあり、追加対策(下記の下写真では棒で防護している)が必要となる等、点検は不可欠のようである。 昨年度の再造林地シカ等侵入防護柵IoT実証に引き続き、今年度から、農林水産省所管の「令和2年度農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究」として、『 省力的かつ経済的効果の高い野生鳥獣侵入防止技術の開発』に参加します。
研究参加メンバー(所属団体)は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、公立大学法人兵庫県立大学、株式会社末松電子製作所、和歌山県、そして、弊社の5団体となり、コンソーシアムを組んで進めます。研究期間は、令和6年度までの5か年です。 研究事業の枠組み等は以下の通りです。これから、詳細についてご紹介します。 昨年度の総務省IoT実証事業「IoTの安心・安全かつ適正な利用環境の構築(IoT利用環境の適正な運用及び整備等に資するガイドライン等策定)」で実施しました「シカ等侵入防護柵の点検自動化に向けたIoTシステムの実証事業」の成果がまもなく総務省のホームページにて公開されます。
○IoT利用環境構築事例集 →皆様の実証成果を基に作成した”ガイドライン等”に該当する資料 ○成果報告書 →実証終了時に提出いただいた成果報告書 詳細については、総務省から連絡がありましたら、掲載します。 |
Author井内正直 Archives
December 2024
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