昨日ご紹介したNHKニュースでの「ふるさとの財産が奪われる!~広がる森林盗伐~」の中で、宮崎大学農学部森林緑地環境学科教授の藤掛一郎先生が、「戦後に人工林を作ってきたが、それが今、切り時を迎えている。本州、東北の方にこれから切り時が移っていくので、宮崎と同じように盗伐の問題が起こる可能性は、全国的に今後増えていくことが懸念される。」とあり、森林ジャーナリストの田中淳夫氏と同様の指摘をされていました。
宮崎県では、「盗伐被害者の会」からの訴え等を受けて、市町村や森林組合と協定を結び盗伐対策を実施していますが、国としては、林野庁が今年3月9日に公表した「無断伐採に係る都道府県調査結果について」(件数等は8/4ブログ参照ください。また調査は都道府県への聞き取り調査のみで、現地調査等は実施していないようです)以降、何か具体的な対策を講じているのかについては、ちょっと把握できません。 平成31年4月1日に施行される「新たな森林管理システム(林野庁ホームページより抜粋の下記図参照ください)」での対応になるのかもしれませんが、「適切な経営管理が行われていない森林を、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化するとともに、それができない森林の経営管理を市町村が行うことで、森林の経営管理を確保し、林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることとしています。」とありますが、これにより盗伐が防げるのか、悩ましいところです。
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昨日掲載したNHKニュース(3月のおはよう日本)ですが、そのきっかけとなった報道が、昨年5月に放映されたMRT宮崎放送制作のドキュメンタリー番組「私の森が消えた――森林盗伐問題を追う」のようです。放映後、10月にTBS系列の「報道特集」で全国放送されて反響を呼び、今年1月には東京新聞「こちら特報部」、そしてNHKが追跡報道した流れとなっています(農文協の「主張」、2018年7月号より:http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2018/201807.htm)。
そして、「私の森が消えた!~森林盗伐問題を追う~」は、第33回農業ジャーナリスト賞の「映像」部門を、今年の6月に受賞しています。今回は、主催する農政ジャーナリストのホームページ(http://jaja.cside.ne.jp/)から、受賞理由を抜粋します。 「森林面積が県全体の76%を占め、スギの素材生産量26年連続日本一の宮崎県で横行する森林盗伐問題の背景と実態を明らかにするため、長期にわたって関係者に丁寧に取材するというオーソドックスな手法に好感が持てる。森林資源の流失だけでなく、環境問題や災害誘発の原因にもなる危険な事態について粘り強く取材を続け、なぜ盗伐が頻繁に発生し、また罰することができないのか。林野行政の問題や警察の怠慢をあぶり出し、腰の重い関係各所を動かしたパワーは高く評価できる。住民の深い苦悩と行政、警察に関する対応も鋭く、ジャーナリズムの力を感じる。こうした「調査報道」によって、関係機関が変わり始めたことに大きな意味がある。番組放送終了後、関係業者が逮捕され、国が違法伐採の全国調査に乗り出すなど、林野行政に一石を投じた。放送後は被害者の会が結成されるなど反響を呼んだ。」 先月31日の朝日新聞朝刊に、「木材の「盗伐「」相次ぐ」と題した記事が掲載されました。林野庁が3月にまとめた「無断伐採に係る市町村等への相談等の件数」を受けての記事のようです。
盗伐の背景として、①スギ丸太価格の上昇、②海外での需要が増加して、国産材の輸出量が10年前の2.8倍となっていること、③再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、昨年9月までの約5年間に全国で82か所の木質バイオマス発電所ができ、木材需要が増加した点を挙げています。温暖な九州南部が全国に先立って伐採期を迎えていることから、これら地域で盗伐が最初に起き、森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、「無断伐採は、今後、全国の山で起こる可能性がある」と警告しています。 また、田中氏は、「被害に遭わないためには、自分の山に興味を持って情報を集めるしかない」と呼びかけています。当協会が開発している「見ま森さま(MMS)」を自分の山に設置することができれば、山から遠く離れていいても、インターネット経由でパソコンやスマートフォン等で森林情報(倒れているか等)を集めることが可能です。盗伐被害防止対策として、ぜひご活用を検討ください。盗伐に関しては、以下の通り、NHKニュースでも取り上げられています。 8月5日の毎日新聞に、C.W.ニコル氏執筆の記事として、「山火事の脅威はすぐそこに」が掲載されています。この記事の中で、「国内の植林されたスギ林の大半は火災の危険がある。放置されているため、枝と枝とが重なりあり林床にまで日差しが届かない。その結果、多くの枝が立ち枯れてしまう。乾いて茶色くなったスギの小枝は非常によく燃え、たき火の際には格好の火種となる。」と指摘していて、乾燥した状態が続けば、山火事の危険が高まると述べています。昨日のブログの通り、我が国でも頻繁に森林火災は発生しているので、早期発見、初期消火が求められます。
国外では、米国カリフォルニア州、欧州、アフリカ等における森林火災情報を見かけますが、我が国での発生状況を調べてみました。
林野庁のホームページによると、「最近5年間(平成24年~平成28年)の平均でみますと、1年間に約1.4千件発生し、焼失面積は約7百ヘクタール、損害額は約4.4億円となっています。 これを1日あたりにすると、全国で毎日約4件の山火事が発生し、約2ヘクタールの森林が燃え、1.2百万円の損害が生じていることになります。」とあり、かなり多く発生していることがわかります。また、下記に、平成26~28年までの10ヘクタール(ha)以上の火災面積を種別に示しました。ここ3年間では民有林の面積は減少傾向ですが、まだまだ大規模な火災も毎年発生していることがわかります。 今朝未明、北海道で震度7の地震が発生しました。土砂災害も多数発生しています。地震のご被害、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早いご復旧をお祈りいたします。
さて、昨日はインドネシアで頻発する泥炭地での森林火災を感知するセンサーシステムをご紹介しましたが、スペインでは、Libeliumという会社が、ワイヤレスセンサネットワークを用いた森林火災を検知するシステムを開発・提供しています。詳細は、以下のサイトをご覧ください。 http://www.libelium.com/wireless_sensor_networks_to_detec_forest_fires/ センサー部分では、温度、相対湿度、一酸化炭素、二酸化炭素を測定し、送信します。これは、「Waspmote」と呼ばれ、かなり省電力(7μA)で、120以上のセンサーから選択可能、16タイプの通信手段(Sigfoxも入ってます)を選ぶことができるようです。下記に、上記ホームページから抜粋した写真を添付します。「見ま森さま(MMS)」での親機に該当します。 株式会社自然資源計画代表取締役の栗原さんのところに、インドネシアからインターンとして来ている学生さんに、インドネシアで森林火災の監視にIoTを活用していると聞きましたので、こちらでも、ちょっとネットで調べてみました。
すると、現在はIndonesiaのUniversitas Palangka Raya所属(Researcher in CIMTROP)のRony Teguh氏が、北海道大学情報科学研究科(システム情報科学専攻)での博士論文として、「Study on Monitoring System for Forest Fires Based on Wireless Sensor Networks」を見つけました。以下に、公開されている学位論文審査要旨を示します。https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/57258/2/Rony_Teguh_review.pdf この研究では、無線センサーネットワーク(WSN: wireless sensor network)を、泥炭地が広がる森林中にランダムに配置して、内臓された温度センサーにより異常温度を感知して、その後、無人飛行機(UAV: unmanned aerial vehicle)を飛ばして最終確認をするシステムとなっています。インターネットに接続されているかどうかについては、これから本文を詳細に読んでみます。 ソーラーパネルで発電した電気は、親機内に設置したキャパシタ(蓄電池)に充電されて、夜間等の電源として利用しています。今回、1,985回の送信中、812回、親機の充電状況をSigfox基地局に送信しています。以下に、送信別の充電状況(V)を集計したグラフを示します。2Vから4.5Vまで、充電と放電を繰り返しています。
親機には、電源確保のため、ソーラーパネル(太陽光発電)を設置してあります。温度と同様に、親機からSigfox基地局までの送信は、キャパシタの充電状況と合わせて、交互に送信しています。発電状況の送信は、全1,985回中、652回送信しています。夜間の0Vから、日中の明るい時間帯を中心に5V以上の範囲となっています。下記に発電状況の送信データの集計結果を示します。発電中では、4.5V~5V未満が最も多く送信しています。
MMS初号機では、姿勢の他に、温度(密閉容器内の温度で気温とは異なります)、ソーラーパネルの発電量、キャパシタの充電量をそれぞれ交互に送信しています。今日は、送信された温度及び、試験設置場所の最も近い熊谷地方気象台に設置してあるアメダスの気温データと比較してみました。
まず、MMS初号機の温度ですが、1,985回送信のうち、952回温度が送信されました。数値の分布は、8.1度から43.5度となりました。一方、同時間帯の熊谷地方気象台の気温(1時間間隔データ)は、8.0度から32.5度の分布となりました。密閉容器の影響により、温度が上昇していますが、その後の改良(通気性を確保するためのベント設置等)により、温度上昇は抑えられています(今後報告します)。下記グラフの横軸は、温度(気温)、縦軸は送信(観測)回数です。 |
Author井内正直 Archives
December 2024
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