本日は、森林火災探知システムに搭載されているマイコンボード及び通信方式についてまとめてみました。下記に、とりまとめた表を示します。
マイコンボードは、Arduinoが最も多く、6件となっています。その他の5件は他のボードを利用しているようです。価格、使いやすさ、大きさ等から選択されたのかもしれません。 通信方式は、Zigbee(Xbee含む)が最も多くなっていますが、モバイル、WiFiも利用されています。 なお、搭載が最も多いZigBee(ジグビー)は、参加できる端末数が最大で65535個の仕様(IEEE802.15.4の仕様)になっています。このように多数のセンサーがネットワークに参加するワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)に最適化し、接続可能な端末数が非常に多いことがWiFi(最大32個)やBluetooth(最大7個)と大きく異なる特徴です。IEEE 802.15.4/ZigBee(ジグビー)が最適なアプリケーションは、①通信データがそれほど大きくない。(センサーデータ、制御データ)、②間欠的にデータの通信を行う、③運用中に端末が移動する。(追加、削除、移動)となっています。(http://tocos-wireless.com/jp/tech/ZigBee/ZigBee.html より引用)
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これまで紹介したIoTを活用した森林火災探知システムに関する研究論文11編の国別、研究開発段階、センサー種別、マイコン(コントロール)、ゲートウェイまでの通信方式について整理してみました。本日は、国別×研究開発段階、センサー種別について、まとめてみました。下記に表及びグラフを示します。
前述した通り、インドの論文が4編ありますが、IT技術であるIoTを森林火災探知に利用するためのコンセプト設計段階にとどまるものがほとんどで、実際の森林環境での通信試験等はこれからのようです。インドネシアとスペインは、森林火災が多発していることを背景に、研究開発は実用化手前まで進んでいる印象です。 搭載されている(予定)センサーは、温度が最も多く、火災と記載されたセンサーも基本的には温度を感知して判断していることから、すべての論文で、温度により森林火災を探知することを基本的な考え方としているようです。さらに、次に多い湿度により、発生可能性(乾燥)も合わせて探知するシステムとしていると思われます。また、CO、CO2のガスセンサー設置も半数近くを占めています。 IoTを活用した森林火災監視研究論文11編の最後の3編をご紹介します。下記に論文名、著者、発表年、センサー、マイコン、通信方式を示します。
昨日同様に、森林火災が多発しているスペインとインドネシアでの研究論文となります。いずれも、現地での通信試験を実施するなど、実用化を目指した研究内容となっています。こちらもその後、実際の森林に設置して、長期運用が行われているのか、気になるところです。 昨日はインドでの研究論文が中心でしたが、本日はインドも含め、スペイン1編、インドネシア2編をご紹介します。
インドは昨日紹介同様に、現地での試験は未実施で、開発段階での報告となっています。やはり、インドはIT大国ということで、IoTを森林火災感知に応用できないか検討中の段階といえるのではないでしょうか。 スペインでは、夏季に乾燥する北部を中心に森林火災が多発していること、インドネシアでも泥炭地が乾燥することで火災が発生したり、焼き畑の延焼等が原因で森林火災が多発していることから、その対策の一つとして、IoTを活用した森林火災監視システムの研究が進められ、これら3編については、現地での通信試験等が実施されています。その後、実際に運用されているかどうか、気になるところです。 今月5日に紹介したインドネシアのRony Teguh氏の研究論文「Study on Monitoring System for Forest Fires Based on Wireless Sensor Networks」の他に、「IoT-related Research in Forestry」と題して、10編の論文をインターンの方が調べてくれましたので、ご紹介します。なお、下記に示した、とりまとめ表の一部情報については、改めて原文を入手して追加してあります。本日は、最近公表された4編についてご紹介します。
4編のうち、3編はインドにある大学等が実施しているもので、IT研究が盛んなことが背景となっていると思われます。ただし、設計コンセプトの検討、実験室でのテスト段階が中心で、実際の森林内に設置してデータを取得している研究ではありません。スペインの研究も、進行中ということで、実際の森林内での試験はまだのようです。また、WiFi通信では、通信距離が短いという制約、4Gでは通信料金が高くなることが課題かと思われます。 今年7月22日から、埼玉県行田市内の2か所の樹木に設置している見ま森さま(MMS)の7と8号機は、これまでほぼ順調に稼働して、データを送信しています。そのデータの詳細な分析は別途報告しますが、ここ数日のデータを見ていると、これまでと異なった傾向が見られます。
設置後は、台風が接近した以外は、太平洋高気圧の縁の部分に覆われているため、気圧は約1,010hPa前後を推移していました。ところが、秋雨前線が通過した今月11日の夜中頃から気圧が上昇し、12日の午前8時には、8号機で1,024hPaを記録しました。その頃の気象庁発表の天気図を下記に示します。1,024hPaの等圧線が埼玉県あたりを横切っているのがわかります。その中心には、大陸から流れてきた1,026hPaの高気圧があります。 夏の太平洋高気圧から、秋の大陸からの移動性高気圧への季節のチェンジが、樹木に設置したMMSからも感じることができます。 「第22回 森林と市民を結ぶ全国の集い2018 in東京」には出席できませんでしたが、それと連携開催されたソフィアシンポジウム「SDGsの実現に向けて:森の生態系サービスを生かした持続可能な地域づくり」に参加してきました。上智大学大学院地球環境学研究科の授業の一環として行われたようで、その学生が多く出席していました。内容は、2つの基調講演と6名によるパネルディスカッションの二部構成でした。
基調講演の一つ目で、国連森林フォーラム第12期議長であったピーター・ベッソ―から、「SDGs・国連森林戦略計画の実現に向けて。生態系サービスを生かした持続可能な地域づくりをどう進めるか―モデルフォレストの20年+の経験から」と題した講演があり、世界各地で取り組まれている「モデルフォレスト」を事例に、森林の持続可能な管理・経営のためには、パートナーシップが重要であることを訴えていました。公開された報告書では、「特に、地元の協力、高度な政策立案者の関与といった一部の人々による参画だけではなく、世界中の多様な人々が何らかの形で関わることが重要である点、その際には、誰といつ、どのように、いつまでに対話をしていくのかに留意することが重要である点を指摘した。」とまとめてあります。 インターネットで世界中の情報をリアルタイムで知ることができますので、森林IoTを世界中に設置することができれば、世界中の様々な人々が森林の持続可能な管理・経営に参画することができるかもしれません。なお、当日頂いたSDGsのクリアファイルがSDGs実現の切迫感を強く感じさせるものでした。下記に写真を掲載致します。 2018年6月16日(土)、17日(日)の2日間にかけて上智大学にて開催された「森林と市民を結ぶ全国の集い2018 in 東京」(参加者数延べ250人)の報告書が先週公表されました。https://www.moridukuri.jp/forumnews/180905.html
6月16日は、基調講演:関係人口をつくる ~ 変わりはじめた「山」・「ひと」・「街」~、講演者:田中輝美(ローカルジャーナリスト)と、パネルディスカッション:これからの「森林」と「市民」の関係が行われました。 6月17日は、4つの分科会が開催され、1.癒す:都市住民が求める「森の居心地」を探る(樹木葬、森林療法、タイニーハウス/トレーラーハウスの事例を通して森林空間の魅力と可能性を探ります。)、2.活かす:森の資源活用の「今」を知る(多様化する森の資源活用形態の「今」を知り、その変化について山、ひと、街の視点から今後の可能性と、私たちにできることが何かを考えます。)、3.暮らす:山村の価値を世界に開く(自然と共生する山村の暮らしの現代的価値を見出し、ライフスタイル発信、持続可能な事業化に第一線で取り組む方々と語り合います。)、4.育む:フォレストラーニング ~森に学ぶ~(子どもたちの感性や情緒を育てる自然体験。森林環境教育の最先端を行く事例とこれからの課題を学び、さらなる拡がりについて考えます。)で議論が交わされたようです。 残念ながら、参加できませんでしたが、2で発表されたいわき市森林組合代表理事組合長田子英司さんの発言に「森林組合職員に、高性能作業機械を導入しながら、森林所有者に何も還元できないのはおかしいと呼びかけた」とあります。還元とは、もちろん金銭的な意味が大きいでしょうが、森林IoT「見ま森さま」により、金銭的なもの以外の価値を提供することができれば、さらに還元が大きくなるかもしれません。 昨日ご紹介したNHKニュースでの「ふるさとの財産が奪われる!~広がる森林盗伐~」の中で、宮崎大学農学部森林緑地環境学科教授の藤掛一郎先生が、「戦後に人工林を作ってきたが、それが今、切り時を迎えている。本州、東北の方にこれから切り時が移っていくので、宮崎と同じように盗伐の問題が起こる可能性は、全国的に今後増えていくことが懸念される。」とあり、森林ジャーナリストの田中淳夫氏と同様の指摘をされていました。
宮崎県では、「盗伐被害者の会」からの訴え等を受けて、市町村や森林組合と協定を結び盗伐対策を実施していますが、国としては、林野庁が今年3月9日に公表した「無断伐採に係る都道府県調査結果について」(件数等は8/4ブログ参照ください。また調査は都道府県への聞き取り調査のみで、現地調査等は実施していないようです)以降、何か具体的な対策を講じているのかについては、ちょっと把握できません。 平成31年4月1日に施行される「新たな森林管理システム(林野庁ホームページより抜粋の下記図参照ください)」での対応になるのかもしれませんが、「適切な経営管理が行われていない森林を、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化するとともに、それができない森林の経営管理を市町村が行うことで、森林の経営管理を確保し、林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることとしています。」とありますが、これにより盗伐が防げるのか、悩ましいところです。 昨日掲載したNHKニュース(3月のおはよう日本)ですが、そのきっかけとなった報道が、昨年5月に放映されたMRT宮崎放送制作のドキュメンタリー番組「私の森が消えた――森林盗伐問題を追う」のようです。放映後、10月にTBS系列の「報道特集」で全国放送されて反響を呼び、今年1月には東京新聞「こちら特報部」、そしてNHKが追跡報道した流れとなっています(農文協の「主張」、2018年7月号より:http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2018/201807.htm)。
そして、「私の森が消えた!~森林盗伐問題を追う~」は、第33回農業ジャーナリスト賞の「映像」部門を、今年の6月に受賞しています。今回は、主催する農政ジャーナリストのホームページ(http://jaja.cside.ne.jp/)から、受賞理由を抜粋します。 「森林面積が県全体の76%を占め、スギの素材生産量26年連続日本一の宮崎県で横行する森林盗伐問題の背景と実態を明らかにするため、長期にわたって関係者に丁寧に取材するというオーソドックスな手法に好感が持てる。森林資源の流失だけでなく、環境問題や災害誘発の原因にもなる危険な事態について粘り強く取材を続け、なぜ盗伐が頻繁に発生し、また罰することができないのか。林野行政の問題や警察の怠慢をあぶり出し、腰の重い関係各所を動かしたパワーは高く評価できる。住民の深い苦悩と行政、警察に関する対応も鋭く、ジャーナリズムの力を感じる。こうした「調査報道」によって、関係機関が変わり始めたことに大きな意味がある。番組放送終了後、関係業者が逮捕され、国が違法伐採の全国調査に乗り出すなど、林野行政に一石を投じた。放送後は被害者の会が結成されるなど反響を呼んだ。」 |
Author井内正直 Archives
March 2025
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